ドイツの暮らしとフェアトレード |
ドイツで売られているフェアトレード・ファッションの洋服を見ていると、時々ブランドのタグとは別に、”MADE-BY”というタグがぶらさがっている。そのタグには、”Committed to producing clothing with respect for people and planet”(人と地球に配慮して洋服を作っています)と書かれている。
どうやら、倫理的に製造された洋服であることをアピールするラベルのようで、オランダを中心に現在28のファッション・ブランドがこのラベルに加盟している(そのうち22は、MADE-BY本社があるオランダのファッション・ブランド)。 ちなみに、今世界的にフェアトレード認証ラベルが普及しつつあるけれど、これはほとんどが食品や原料の分野。 なぜなら例えばチョコレートやコーヒーのような食品やコットンのような原料は、国や生産環境に関わらず、世界的な市場価格や生産工程などが割と共通しているので、比較的認証基準を作りやすいからである。 一方、ファッション分野については、それぞれの洋服やアクセサリー、小物によって使われている材料も多様だし、織りや刺繍など多様な技術・生産工程があり、またデザイン性などの付加価値で価格が大きく変わる。それゆえ、絶対的な統一基準を作ることはとても難しい。そのような背景もあり、フェアトレード認証ラベルについては、まだまだファッション分野では普及していない。 そういうわけで、たとえば日本のフェアトレード・ファッション・ブランドであるPeople Treeのように、一つ一つの商品毎にフェアトレード認証を受けているのではなく、会社そのものがWorld Fair Trade Organization(WFTO)からフェアトレード認証を得ているケースが多い(ファッション分野では)。つまり、会社そのものの活動や生産工程全般においてフェアトレードの基準を満たしていると認証を受けているのである。 このMADE-BYは、これらの動きとはまた別に、ファッション分野に限定してもっとフェアトレードやEthical Tradeを推進したいという目的から、オランダのフェアトレード組織であるSolidaridadが主導して設立したラベルだ(ちなみにMADE-BYの会社の会長も、SolidaridadのトップであるNico Roozen氏が務めている)。 ちなみにMADE-BYラベルでは、「フェアトレード」という言葉は使っていないが、同様にsustainabilityやenvironmental & social conditionsに配慮した製造を行うことを掲げているので、もっと大きなくくりでEthical Fashion(倫理的なファッション)ラベルといったほうがいいかな。 また、これは「認証ラベル」というよりは、「推進ラベル」という感じかなぁ。 なぜなら、このラベルでは、それぞれのブランドが社会的・倫理的に公正な生産をすることを“目指して”加盟しており、各ブランドはMADE-BYからアドバイスを受けながら、倫理的な観点から生産工程を改善したり、オーガニックコットンの導入など環境面での改善を行っているのである。MADE-BYのアニュアルレポートにも、「加盟するための条件は緩いけれど、加盟したらコミットメントを求めます」と書いてある。 つまり、ラベルがついているからといって、「これは公正に作られた商品です!」というお墨付きがついているのではなく、ブランドによってその達成レベルは異なる。MADE-BYでは、各ブランドが社会・環境面で毎年どれだけ改善したかをスコアカード(成績表)にして示している。 ということで、このラベルは、商品毎に認証するFairtrade Labelling Organization (FLO)のラベルや、組織として10個のフェアトレード基準をクリアすることを求めるWFTOのフェアトレード認証ラベルとは、違うものと考えたほうがいい。これら2つのラベルのように、決してフェアトレードやEthical Fashionのお墨付き(認証)を与えているわけじゃないから。 そういう意味で、このMADE-BYラベルは誤解を与えやすいし(ラベルが公正さを認証しているかのように見える)、目指している会社ならだれでも加盟できるのか!?と考えると、消費者的はラベルをどう捉えればいいのか、その意義が曖昧に思える。 (World Fair Trade Organizationのフェアトレード認証マーク *旧名称IFATの頃のものの写真) (左:Fairtrade Labelling Organizationのフェアトレード認証マーク) とはいえ、冒頭でも書いたように、ファッション分野でフェアトレードの絶対的な統一基準を作るのはとても難しいので、このMADE-BYラベルのように、ブランドのミッションとして倫理的・公正な形で製造することを掲げている企業を示すラベルというだけでも、ひとつの価値はあるのかな。認証ではないけれど、あくまで「推進」するということも今は大切だから。 また、企業側にしてみれば、いきなりフェアトレードのラベル認証に申請するのではなく、ラベルに加盟しながら生産工程を改善していくべくコンサルティングを受けられるというのは参加しやすく、より多くの企業がフェアトレードの世界に足を踏み入れるきっかけになるかも。 でも、その分消費者は、MADE-BYラベルがついているから安心!とボンヤリ構えているのではなく、各ブランドがミッションに掲げる通り、どこまで公正に配慮して製造しているか、ちゃんとチェックすることが求められる。 ちなみにMADE-BYのウェブサイト上では、各ブランドの商品コードを入力すると、原料から最終工程に至るまでどの国でどのような生産者によって製造されたかをトラックすることができる(まだ一部のブランドのみが実現できているだけだが)。製造過程の情報がきちんと入力されアップデートされているかは、MADE-BY事務局がモニターしているということだ。食品の産地トラックシステムのようで面白いし、まだ他にはなかなか見られないものだ。 また、各ブランドがどこまで達成できているかを、ウェブ上のスコアカードで確認することもできる。 こういう新しい動きを通して、ファッション分野でフェアトレードやEthical Fashionが広がるのは良いのだけれど、ラベルがむやみに増えると消費者としては分かりづらいし、そのラベルが何を証明しているのかちゃんと考えないと誤解を生みやすい(多くの人は買い物する時にパッとラベルを見る程度だろうから)。 ラベル同士が統一していくか、もしくは誤解を生まないように、それぞれのラベルが何を証明しているのかもっと分かりやすくしなければいけないと思う。そして、やっぱり私たち消費者も、自分たちでちゃんとチェックするということも意識しないといけないなぁと感じた。 それにしても、MADE-BYラベルは、これから日本も含めて世界に広がるのかどうか注目です!
by nakazawamlibra
| 2009-08-22 23:36
| フェアトレード
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